魚の体に灰白色の綿のようなものが生えてきたら、水カビ病は有力な鑑別候補です。水カビはふつう傷ついた表皮や卵の上で増えるため、付着物に対処するだけでなく、外傷、寄生虫、細菌感染、環境ストレスといった元の原因を探すことも必要です。[1][2]
白い綿状のものを見つけたら、まず確認すること
まず水質を測ってエアレーションを確認し、最近、網ですくった、輸送した、けんかした、水温が急に下がった、薬品処理をしすぎた、といったことがなかったか振り返りましょう。綿状のものの位置、広がる速さ、潰瘍を伴っているかを記録し、何度も確認しようとして頻繁に魚をすくうのは避けます。
死んだ魚、食べ残し、腐敗した有機物を取り除き、その魚に合った水温と環境を保ちます。複数の魚が発症している、病変が急速に広がっている、エラや口が侵されている、呼吸や摂食に明らかな異常がある――このような場合は早めに獣医師に相談しましょう。
水カビの正体は卵菌
水カビ病は Saprolegnia 属と関係することが多い病気です。Saprolegnia は卵菌の仲間で、分類上は本当の菌類(真菌)ではありません。古い文献の fungus や日本語の「水カビ」は、見た目が似ていることから伝統的な呼び名が今も使われているものです。[2]
ほかの卵菌も魚の病気を起こしますが、卵菌の感染をすべて一般的な水カビと同じに扱うことはできません。たとえば Aphanomyces invadans は流行性潰瘍症候群(EUS)を引き起こし、専門的な鑑別が必要な別の病気です。深い潰瘍を、白い綿状のものを伴うというだけで単純な表面の水カビとみなすべきではありません。[2][3]
なぜケガのあとに生えやすいのか

水中の胞子と魚の接触はごくありふれたことで、健康な魚は粘液、表皮、免疫によって身を守っています。外傷やほかの病原体がこのバリアを壊すと、水カビは傷ついた組織に定着しやすくなるため、二次感染として現れることが多いのです。[1][2]
| 考えられるきっかけ | 飼い主が確認できる手がかり |
|---|---|
| 網ですくう・ぶつかる | 傷が最近の作業やけんかのあとに現れていないか。 |
| 寄生虫や細菌の感染 | 目に見える虫体、赤い腫れ、潰瘍、そのほかの病変を同時に伴っていないか。 |
| 合わない水温や急激な変化 | その魚に必要な条件と照らし合わせ、換水、停電、寒波の前後の記録を確認する。 |
| 過密や不衛生 | 飼育密度が高すぎないか、水槽内に死んだ魚、食べ残し、腐敗物がたまっていないか。 |
| 長期的なストレスと免疫力の低下 | ほかのストレス源が長く続いていないか、魚自体の体調が悪くないか。 |
これらは探すべき危険因子であり、それだけで確定診断にはなりません。一部の Saprolegnia は一次的な病原性を持つこともあるため、「必ず先に傷がある」よりも「多くは二次感染」と表現するほうが正確です。[1][2][4]
白い綿状のものとカラムナリス病の違い
水カビは灰白色の綿のような糸状の増殖物として現れることが多く、皮膚、エラ、目、ヒレに見られます。色やふわふわ具合は手がかりにすぎません。[2]
カラムナリス病は細菌感染症で、口や皮膚が綿のように見えることもあり、ただれ、鞍状の斑、黄白色の粘液状の付着物を伴います。この2つは同時に、あるいは前後して起こることがあり、水カビと確認できても、その下にもともとある細菌性の病変を見落としてはいけません。[5]
顕微鏡検査では、水カビの太くて隔壁のない菌糸を確認できます。必要に応じて培養、病理組織検査、そのほかの検査を行います。白い綿状のものを自分でこすり取ったり、はがしたりしないでください。表皮をさらに傷つけるおそれがあります。
卵にカビが生えて広がるのはなぜか
死んだ卵や傷んだ卵は水カビが増える足場になり、そこから菌糸が近くの卵へと伸びていきます。温水魚の人工繁殖マニュアルによると、正常に発生している卵はふつう透明で中身も澄んでいますが、だめになった卵は白く不透明で中身が濁ります。未受精卵は初期には受精卵と見分けにくく、最初の卵割の時点で正常な発生から遅れが出てはじめてわかります。受精しているか、死んでいるかは、魚の種類とふ化の段階を合わせて判断する必要があります。[6]
同じマニュアルでは、繁殖システムでのふ化にはきれいで酸素を含む流れのある水が必要で、仔魚がふ化したら卵の殻やだめになった卵から分けるべきだとされています。[6] 掃除のために親魚の世話を妨げたり、健康な胚を傷つけたりしないようにしましょう。
卵に広範囲のカビが生え続ける場合は、付着物だけでなく、受精の状況、親魚の状態、ふ化環境、ほかの感染も確認しましょう。薬品処理を増やすだけでは解決になりません。
水カビへの対処は元の問題の改善とセットで
まず水質、水温、衛生状態を改善します。傷の原因が寄生虫や細菌であれば、その元の問題への対処も必要です。白い綿状のものが一時的に減っても、傷の原因を解決しなければ再発を繰り返すことがあります。[1][2]
薬を使うかどうか、どの薬を選ぶかは、魚の種類、病変、混合感染、飼育システムの条件をもとに獣医師が判断します。正規に承認された適切な動物用医薬品を、ラベルと獣医師の指示に従って使用してください。
よくある質問
寒い時期に白い綿状のものが生えたら、水カビと断定できますか?
いいえ。適温より低い水温は感染しやすさを高めることがありますが、ほかの病変も似た見た目になるため、やはり検査が必要です。[2]
目立った外傷がなくても水カビ病になりますか?
かかることがあります。表皮の傷は肉眼で見えないこともあり、元になる病気が隠れている場合もあります。一部の水カビは一次的な病原性を持っています。[4]
白い綿状のものが消えたら、元の傷はもう気にしなくていいですか?
組織の回復、摂食、呼吸を引き続き見守り、傷の原因になった問題が改善されたかどうかも確認しましょう。
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参考文献
- Francis-Floyd R, Stilwell NK, Yanong RPE. Introduction to Fish Health Management. UF/IFAS, CIR921/FA004, 1990(2025年改訂).
- Petty BD, Francis-Floyd R, Yanong RPE. Parasitic Diseases of Fish. Merck Veterinary Manual, 2022年改訂.
- WOAH. Infection with Aphanomyces invadans epizootic ulcerative syndrome. Aquatic Manual, Chapter 2.3.1, 2023.
- Alaska Department of Fish and Game. Saprolegniasis Cotton Wool Disease, 2026年10月閲覧.
- Declercq AM et al. Columnaris disease in fish a review with emphasis on bacterium-host interactions. Veterinary Research 44, 27, 2013. doi:10.1186/1297-9716-44-27.
- Woynarovich E, Horváth L. The Artificial Propagation of Warm-water Finfishes. FAO Fisheries Technical Paper 201, 1980.

